A:  理念

近年の木造住宅を考えた時、住宅という一つの財産を25年〜30年間隔で建て替えてしまう、「使い捨て住宅」思考が主流になっていないか、また自然の力を有効活用せず、人工的な電気、ガス等に頼りがちではないかなどを考えた結果、何世代にも渡って暮らしていける「100年環境共生住宅」を設計することを目指す。

 また、設計していく中で「100年環境共生住宅」を目指すには、強固で間取り変更が容易な構造が、必要不可欠となってくる。そのために、現在主流になっている工法以外にコスト、施工性、応用性、強度などで優れている工法がないか検討し、その工法を設計プランに取り入れ,低価格の住宅の提供を目指す。

 A-1 環境共生住宅

(1)基本要件

「地球環境の保全」

1.住まい・まちづくりのライフサイクルにおける省エネルギーを推進し、自然・未利用エネルギーなどの利用を促進することによって、地球温暖化を抑制する。

2.住まい・まちづくりのライフサイクルにおける資源の有効利用やリサイクルを推進し廃棄物を大幅に削減する。

「周辺環境との親和性」

3.敷地およびその周辺環境が持つ気候・風土や生態・人文条件を十分に把握し、生態的に豊かでその地域性に親和した、美しい住まい・まちづくりを推進する。

4.敷地・周辺環境条件に応じた住まいやまちの内外の連関性に配慮し、自然の恩恵を享受できるように努める。

「居住環境の健康と快適性」

5.敷地条件に即した住宅の基本的な安全性・健康性・快適性を確保するとともに、年齢やライフスタイルなど、個々の住み手の属性に配慮した住まいづくりを推進する。

6.集合した住宅地を計画する場合、個々の居住環境を豊かに形成しながら、住み手同士や周辺住人との共生的な暮らしができるような住まい・まちづくりを推進する。 

「活動を広く国内に持続的に普及・推進するため」

7.国内の住宅生産・供給者、設計者、技能者、さらに生活者に向けて、環境共生住宅の趣旨や手法、そして暮らし方についての情報公開、情報交流を積極的に推進する。

(2)なぜ環境共生住宅が求められるのか

現在、建物の建設・使用廃棄の過程で大量に消費されるエネルギーや資源、その結果としての地球温暖化や廃棄物の処理能力の限界などさまざまな問題が持ち上がっている。

 そのような問題を踏まえて「使い捨てという考え方の住宅」から「家を住み継いでいくことを考えた住宅」を目指していく必要がある。

A-2 百年住宅

(1)百年住宅とは

現在、日本の住宅産業は120万戸前後の年間着工件数を維持している。しかし、個々の住宅の平均使用年数はわずか2530年程度と極めて短期間である。

 それに伴い、建物の建設・使用廃棄の過程でエネルギーや資源が大量に消費され、その結果として地球温暖化などの環境問題や廃棄物処理の限界など、様々な問題が持ち上がっている。

このような背景より百年住宅という考えが生まれてきた。

(2)日本の住宅の使用年数が短い理由

スクラップアンドビルド

日本の住宅は規模が小さく、間取りの変更がしにくい

参考資料:住宅の使用年数について

日本の住宅と世界の住宅の格差

イギリス

141

アメリカ

103

フランス

86

ドイツ

79

日本

30

※先進5カ国の住宅の既存総数を年間新設住宅個数で割り求めた住宅更新年数の指標。

欧州諸国は第一次世界大戦以前に立った住宅が軒並み20%程度残っているのに対し、日本は5%程度まで減少している。

(199897日付:日経アーキテクチュアー)